味噌、しょうゆ、豆腐、おからなど、私たち日本人は古くから身近に大豆食品がありました。
大豆は天然のマルチサプリといわれるほど栄養バランスが整った食品です。
最近では、世界的にも大豆食品に含まれる成分の研究が進み、価値が見直され急速に広まりました。
とくに豆腐は、多くのハリウッド女優や海外セレブも注目する食材です。
豆腐はもちろん、大豆食品といえば「大豆イソフラボン」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか?
今回は、女性には欠かせない大豆イソフラボンをはじめ、
加工方法によって摂れる栄養素に違いはあるのかなど、大豆食品に関する様々な疑問を
解明していきたいと思います。
大豆食品と聞いて、どのような食べ物を思い浮かべますか?
豆乳、豆腐、納豆、あげなど、たくさんの大豆食品がありますね。
それぞれの加工方法については下記のような内容になっています。
様々な形に加工することで、栄養を高めたり、使い易さや栄養の吸収のしやすさなどの
工夫をしています。
1でご紹介したとおり、大豆は様々な加工を経てそれぞれの大豆食品になります。
普段口にすることの多い、水煮大豆、豆乳、豆腐、納豆、
さらに最近ではスーパーでも見かけることの多くなった蒸し大豆について、
栄養成分をまとめました。
発芽大豆 |
水煮大豆 |
豆乳 |
豆腐 |
納豆 |
|
たんぱく質 | 15.7g | 11.4g | 3.7g | 5.4g | 15.9g |
ビタミンB1 | 0.19mg | 0.09mg | 0.05mg | 0.10mg | 0.08mg | ビタミンB2 | 0.09mg | 0.05mg | 0.02mg | 0.04mg | 0.23mg |
ビタミンE | 1.4mg | 1.3mg | 0.6mg | 0.2mg | 1.2mg | ビタミンK | 8μg | 8μg | 5μg | 6μg | 759μg |
カルシウム | 88.0mg | 110mg | 53.8mg | 25.7mg | 84.9mg | マグネシウム | 112mg | 62mg | 20.2mg | 81.8mg | 94.0mg |
鉄 | 2.57mg | 2.09mg | 0.41mg | 1.06mg | 2.55mg | カリウム | 805mg | 274mg | 156mg | 200mg | 699mg |
食物繊維 | 7.8g | 6.7g | 0.1g | 0.4g | 7.1g | 大豆オリゴ糖 | 1.86g | 0.79g | 0.42g | 0.50g | — |
レチシン | 572mg | 575mg | 141mg | 235mg | 864mg |
ギャバ | 20mg | 3mg | — | 3mg | 2mg |
葉酸 | 72μg | 44μg | 26μg | 11μg | 160μg |
イソフラボン | 120mg | 62mg | 12mg | 25mg | 51mg |
データ:日本食品分析センター
栄養成分を見てみると、同じ大豆からできた食品でもずいぶん栄養素の違いがあることが分かります。
どうしてこのような違いが出るのでしょうか?
実は、加工方法によってある栄養成分が除かれたり、なくなってしまうことがあるのです。
例えば、皮膚や粘膜の健康維持を助けるビタミンB1は、
水煮大豆や、豆乳、豆腐など水で煮て加工した食品は少なくなってしまいます。
これは、ビタミンB1が水に溶ける性質がある栄養成分のため、
煮る過程で水の中に栄養成分が溶け出してしまうことが原因です。
女性には欠かせない大豆イソフラボンも水溶性の栄養成分。
大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持っているため、
乳がんリスクを下げたり、骨密度の低下を防ぐといわれています。
女性の命を脅かす病気から守ってくれる大切な栄養素です。
水煮大豆や、豆乳豆腐と比べ、水で煮る過程のない蒸し大豆では、
このイソフラボンが多く残っていることが分かります。
その他、納豆はビタミンKやレシチン、葉酸も多く、健康価値の高い大豆製品ですが、
発酵の過程で腸内環境改善に欠かせない「大豆オリゴ糖」がなくなってしまいます。
とくに注目していただきたいのは食物繊維!
最近では、大腸がんを予防したり、生活習慣病を予防するとして、
たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素に続く、第6の栄養素として
注目されています。
そんな食物繊維ですが、豆乳や豆腐は、煮た大豆を絞っておから部分を取り除いているため、
食物繊維はほとんどありません。
その代わり、食物繊維が取り除かれることで消化吸収が良い大豆食品ともいえます。
豆腐の消化吸収率は95%ともいわれているほど。
それぞれの長所を理解し、大豆食品を組み合わせながら毎日続けて摂ることがおすすめです。
健康や美容のためにと大豆食品を摂る方は多くいます。
しかし、時には大豆の栄養成分について疑問を持つことがあるかもしれません。
今までだいずデイズにお問い合わせがあった、「大豆の毒」についてのお話をさせていただきます。
「え、大豆には毒があるの?摂らないほうがいいんじゃない?」と思った方、
食べ方や加工方法、摂る量を理解していれば問題ありません。
まず、大豆にはもともと昆虫や外敵から身を守るため、生物毒を持っています。
生物毒は、大豆に限らず植物の種子に多く含まれており、強いアクのようなものです。
このアクの正体は、主にサポニンと呼ばれるタンパク質です。
サポニンの中には赤血球を破壊してしまう溶血性のサポニンがあり、貧血などの原因になります。
その代表といわれるのがゴボウです。
ですから、ごぼうは調理の前に水に浸しアク抜きを行ってから安全に食べます。
ここで気をつけたいのは、大豆に含まれるサポニンについて。
じつは大豆のサポニンには溶血性がありません。
何に由来するかによって全く性質が異なるのです。
イソフラボンの摂取量についてもお問い合わせをいただくことがあります。
大豆の栄養素の中で有名なイソフラボンは、抗がん作用があると言われている一方で、
新陳代謝を落としてしまうということもあります。
女性ホルモンのエストロゲンに近い働きがあるため、更年期障害に良いという研究結果がある一方、
過剰摂取することで体を冷やしたり、子宮内膜症の危険性が高まるともいわれています。
その他、15歳未満の子どもに大豆イソフラボンのみを抽出したサプリメントなどを与えることは、
生殖器の発達異常の恐れがあるとされています。
食品として摂る以外のサプリメントはおすすめできません。
ここまで、少し怖いと感じるかもしれないお話をしましたが、大豆には優れた栄養がたくさんあります。
それに、豆腐や煮豆など大豆食品は日本人が古くから食べてきた美味しい日本食。
長寿の国を作ってきた1つの食材ともいえます。
どんな食べ物も、長所と短所を持ち合わせています。ですから、知って食べるということが大切です。
大豆食品の安全性についてのお話をしましたが、
過剰に摂取することが体に影響を及ぼすかもしれないといわれていました。
では、具体的に1日どのくらいの大豆製品を摂るのが健康に良いのでしょうか?
大豆イソフラボンに注目してご説明します。
更年期の日本人女性58名を対象に、ある実験が行われました。
大豆イソフラボンを1日40 mg、4週間摂取してもらったところ、
更年期障害の症状であるほてりが緩和され、高血圧患者の血圧が有意に低下していたのです。
そのほかにも、66名の閉経後の女性を対象として、
90 mgまたは56 mgの大豆イソフラボンを6か月間摂取させたところ、
90 mg摂取させたグループの方が、骨のミネラル密度が増加という結果も報告されています。
内閣府の食品安全委員会では、大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安量の上限値として、
70~75 mg(大豆イソフラボンアグリコン換算値)を設定しています。
この値は、日本での食経験と、ヒト臨床研究に基づくものです。
大豆食品50gあたりのイソフラボンの含有量(大豆イソフラボンアグリコン換算値)は
下記のようになっています。
イソフラボンのサプリメントなどを摂らない場合は、
大体納豆1パックぐらいを毎日食べるのがおすすめの量ということ。
イソフラボン以外の栄養成分も考えながら、
それぞれの大豆食品をうまく組み合わせて摂取できたら素敵ですね。
なお、食品安全委員会の報告書には、
「大豆イソフラボンアグリコンの一日摂取目安量の上限値、70~75mg/日は、
この量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値であること。
また、大豆食品からの摂取量がこの上限値を超えることにより、
ただちに健康被害に結びつくというものではないことを強調しておく。」
というイソフラボン摂取の上限値についての記載があります。
さらに、日本人には、豆腐、煮豆、味噌などの「伝統的な大豆食品」について、
日常生活における長い食経験があり、これらの大豆食品を食べることによる大豆イソフラボンの
健康への有害な影響が提起されたことはありません。
「遺伝子組み換え大豆は使用していません」という表示を見て、安心して商品を購入する。
そんな場面ありますよね。
この遺伝子組み換え大豆とはどのような大豆なのでしょうか?
優れた品種を作り出すために、植物や動物の品種を交配する、ということは古くから行われていました。
従来の交配が同じ種(稲と稲など)、または近縁の種(ロバと馬など)同士の掛け合わせ。
一方、遺伝子組み換えというのは、簡単に言うと
ほうれん草の遺伝子を豚に組み込んだり、サソリの遺伝子をキャベツに組み込むこともできるということ。
組み込む遺伝子自体に危険性がなくても、遺伝子組換え技術自体が不安定なものなのです。
危険なものが偶発的に生まれてしまう可能性があるため、避ける人が多いのです。
日本では、「遺伝子組み換え大豆」という表示を見かけることは少なくなっています。
しかし、日本で流通している大豆の約95%は輸入。
そのうち7割の大豆はアメリカから輸入していますが、
アメリカで栽培されている大豆の約80%は遺伝子組み換え。
つまり、日本で流通している大豆の約8割が遺伝子組み換えということになります。
どうして「遺伝子組み換え大豆」という表示をみないのでしょうか?
それは、あるトリックが隠されています。
まず1つ目は【組みかえられたDNAや、それによって生成したたんぱく質が含まれない場合には
遺伝子組み換えの表示義務がないこと】、
2つ目に【原材料の上位3番目以内で、重量が5%以上のものにしか表示義務がないこと】
そして、【5%以下の意図せぬ混入には表示義務がないこと】があげられます。
これらの理由から、私たちは知らずしらずの内に遺伝子組み換え大豆が含まれる商品を
口にしているかもしれないのです。
より栄養価の高い食品をつくりだしたり、野菜が育ちにくい環境で生産性をあげたり、
メリットもあるといえる遺伝子組み換え技術。
安全性については様々な研究が行われており、これから分かっていくことも多くあるでしょう。
様々な大豆食品の加工方法から栄養成分、安全性に関わることまでお話してきました。
大豆に関わらず、自分の口に入り体をつくる食品。
何よりも、正しい知識を取り入れ、普段の食生活にいかしていくことが大切です。
私たちのつくる蒸し大豆に限らず、古くから日本人に愛されてきた大豆が、
少しでも皆様の健康つくりに役立っていたら嬉しいです。